世界のプロスポーツで「フリーエージェント」という制度が最初に誕生したのは一九七六年、アメリカのMLBだった。NPBでは遅れること17年、1993年オフに導入された。ただし、日米の「フリーエージェント」…
情報源: 9割超が“行使せずに残留” プロ野球「FA制度」はなぜ使いにくいのか | 文春オンライン
こういうブログをやっていると色々なご質問を受けることがある。特に若い方から意見が多いのはFA制度について。まぁFAについては色々な考え方があるだろうし、巨人ファンとカープファンでも意見が分かれることだろう。難しい問題だよな。特にカープは取られるばかりで取ることをしない。よってファンもこのFA制度には決していい印象を持っていない。そしてカープから出ていく選手の印象も悪くなる。このFAの印象をよくするにはカープもFA戦線に手を積極的に上げればいいって話。そうすれば「取られっぱなし」を解消できるわけで、それをやればいいってこと。まぁそれができないのも「カープ」だし、それをやると球団が傾いてしまうのも「カープ」。だから難しい。
カープも2年くらい前から「FAラッシュ」が続いた。カープの場合は若い時からゲームに出させてもらえる環境だから、三十歳手前で権利を獲得する選手が多い。他球団からすれば、あと5年は使える選手が多いからな、そら魅力的だし手を上げたくもなるよな。そんな中、今オフ広輔が残留を決めたことであと大瀬良が権利取得するくらいで嵐は過ぎ去るよな。結果は丸を除いてみんなカープを選択してくれた。これはファンとしては大変ありがたいし、カープ球団も頑張ったよな。そして選手たちには感謝の言葉しかない。
ただ、カープだけこれだけ残留が多かったわけではない。すでにヤクルトの山田や宣言するのでは?と言われていたソフトバンクの長谷川も残留を決めた。昨季は権利保持者の9割が残留したそうな。こうなるとFA制度って本当に必要なのか?改革が必要なのではないか?そもそもプロ野球選手会が「選手の移籍の自由」を求め、メジャーに習って導入した制度なのに、アメリカのような活発な選手の異動が行われていないのが現実。これではFA制度がある意味、残留・契約条件の見直しの場と化してしまい本来の目的が見えなくなってきているように思う。
なぜ、FA宣言をする選手が少ないのか!?
では折角権利を得たのに「宣言せずに残留」を選択する選手が多いのはなぜなのか?引用記事にもあるように日本のFA制度は使いづらい。ここには日本の文化が微妙に絡んできて、選手を悩ませている背景があるんだろねぇ。
丸もFA宣言をするときに相当悩んだのはカープファンなら知っているだろう。チームへの愛着、新しい挑戦、家族のこと、折角の「移籍の自由」の権利を得たわけで、その中でベストな選択をしたいと考えるのは当然のことだろうねえ。そして決断を迎えることになる。そう、「FA宣言」をしなくては先に進まないんだよな。これが日本のFA制度の使いづらさを象徴しているんだよな。「FA宣言」=その球団を出ていく。そういう印象を作ったのは実はカープ球団。マネーゲームを避けるために権利を保持している選手と事前交渉を重ね、条件面で納得してもらい宣言せずに残留する。もし宣言するのであれば再交渉はしない。つまり「宣言して残留は認めない」。カープはこの姿勢を貫いてきた。金本さんのFAあたりから宣言残留もOKという柔軟さは示し始めたもののそういった条件でも出ていく選手は出ていくもの。つまりFA宣言=移籍という図式が日本のプロ野球界ではある意味「常識」になってしまっている。
だから宣言をした選手に対して、裏切りや結局は金か?という感情がファンに湧き上がってきてしまう。この感情を批判する人も多いし、当ブログに質問を投げかけてくる若い方がこういったファンの感情や言動をいかがなものか?と問いかけてくる嘆きの声もいただく。アタクシは過去に何度もそういうのを見てきているので「選手の自由だから」とある意味ドライな眼で見れるけど、なかなか納得できないというファンもかなりの数いるだろうねぇ。選手側から見れば「宣言」することはその球団への「決別宣言」を意味する。これを言い出すってのはかなりの度胸と揺るがない信念が必要だよな。折角得た権利を行使するのにこの「修羅場」を潜り抜けなきゃいかんのはおかしいように思う。そらビビるってのものよ(笑)。日本のFAの使いづらさはまさにここ。「自分で宣言しなければいけない」。この1点だけでも取り除いたらもっと移籍の活性化につながるだろうねぇ。
メジャーでは自動的に1年を145日として1032日在籍していればFA。マイナーリーグにもFAがある
FAを最初に導入したのはもちろんアメリカのメジャーだよな。なんでも球団の契約内容に不満な選手が裁判を起こした。まぁ訴訟社会であるアメリカらしいと言えばそれまでだけどな。その後法廷闘争やストライキを経てFA制度が確立した。これまでは一握りのスター選手以外の年俸を抑えられたのが、この制度を機に契約条件が良くなってきた。今ではかなりの札束が飛び交うまでになった。そしてスター選手でなくても移籍できるほどの柔軟性も加わった。これが本来のFAのあるべき姿なんだろうねぇ。
なぜここまで活発化できたのか?それは条件を満たせば自動的にFA(自由契約)になるからなんだよな。日本での自由契約と言えばクビ宣告に等しいイメージだけど、球団が必要かどうかといった球団基準ではなく選手の判断で自由に契約できる。日本は裏切り者呼ばわりされる覚悟が必要なFA宣言とは大違い。ここがミソなんだろうなぁと思う。
そしてマイナーリーグにもFA制度がある。つまり日本のどこかの球団のように囲い込みができない。いい選手なのにチーム事情でゲームに出れないという話を聞く。そういった選手が活躍できるチームを求めて移籍の自由がある。いいことだよな。
木村省吾さんのFA宣言は失敗に。本来ならこのクラスの選手がどんどんFAで移籍するべき
最近ファンになった方はご存じないかもしれないけど、見出しの画像にある元カープの木村省吾さんは決してスターや大物ではない選手がFA宣言したことで話題になった。この時もカープ球団は「FA宣言」=自由契約という立場で木村さんに接してきた。宣言したはいいがどこも獲得意思を示す球団がなく、結局西武にテストで入団した。FA宣言して失敗した事例でこれはかなりレアなケースだったろう。今ではクリケットに活躍の場を移し活躍されている。これはこれで良かっただろう。
木村さんはカープ時代スタメンに出たこともあるし、内野ならどこでも守れるユーティリティプレーヤー。足も速く代走起用も多かった。年俸は4000万円くらいまで行ったと記憶している。ただレギュラーではないため、もっとゲームに出たいとFA宣言して活躍の場を求めた。本来ならこれがFAの姿のように思う。それが結局はテストで年俸も半分以下に抑えらえる結果となった。こういうのがあるから「宣言」するのにためらう選手も多いのだろうねぇ。あの当時は「勘違いFA」なんて茶化されたけどな、これが「宣言」ではなく自動的にFAならもっと違った結果になったようにも思う。
日本ならではの「移籍の活発化」もあるのではないだろうか?
ソフトバンクがずっと日本一になっている。その球団経営の素晴らしさは称賛に値する。その球団経営の中でクローズアップされるのが「三軍制」の存在。育成選手をたくさん獲得し、「三軍」で鍛える。プロアマ問わずゲームをたくさん経験して、使える選手を吸い上げていく。エース千賀や正捕手甲斐は育成出身。先進的な球団経営でチームを強くしているのがわかるよな。
セ・リーグの盟主巨人も3軍制を敷いている。こちらはあまり目立った選手が出てこないけど、過去には山口鉄也さん、松本哲也さん、最近では確か松原も育成出身だったように思う。新人はドラフトでという考え方がだいぶ変わってきているように思う。
ただ、恐らくだけど、後々この3軍制は「不公平だ」という声が大きくなるように思う。巨人は今季オフかなりの戦力外通告を行った。再契約結ばない選手も多い中、例えば故障している選手をいったん育成契約にして、70人枠から外し、故障が癒えたら再契約なんてぇ70人枠の抜け道に使われるケースが目立ってきた。そして今ではあまり使われなくなった言葉で「青田刈り」や選手の「乱獲」と言われる可能性もある。育成選手には制限がない。カープも毎年1~3人くらい取ってファームのゲームで経験を積ませる。3軍は育成選手だけでもチームが作れて実戦を積ませる。給料はほぼないに等しい。その中でいいのをピックアップして吸い上げていく。これ、出来る球団とできない球団があるわけで、不公平感を感じる球団やファンは多くなってくるだろうねぇ。ゆくゆくは戦力の二極化を招き、若手を囲い込む道具になると言われ始めるだろうねぇ。
そんな日本のプロ野球界でもそういった選手を救済する制度として現役ドラフトというのを導入しようという声が出てきた。沢山の選手に1軍でゲームに出られるチャンスが拡大する。非常にいいことのように思う。ただ、これもプロテクトとか現役ドラフトにかかりたい選手は自分で手を上げなきゃいけなくなるのではないだろうか?いい制度もどんどん骨抜きにされていく。日本のFA制度もどんどん骨抜きにされて使いづらい制度になった。同じ道をたどるような気がする。
もう一つはエクスパッションだよな。いわゆる球団を増やそうという話。これはソフトバンクの王会長が盛んに呼びかけているよな。球団数が増えれば当然、プロ野球選手の門戸も広がる。こういう形で出場機会のない選手に活躍の場を与えることは日本の野球界にとって絶対にやらなきゃいかんことだろうねぇ。アタクシはこっちの方がいいように思う。
一番いいのは「自動的に」FA。でもそれを嫌がる球団もある??
じゃ、日本のプロ野球もアメリカ式を取り入れたらいいんじゃない??そうお考えの方もたくさんいらっしゃるだろう。アタクシもそう思う。でも日本のプロ野球のルールを動かすには12球団のオーナー会議が「Yes」と言わなければ動かない。そういう仕組みが硬直化を生んでいるんだろうねぇ。ファンからは「何やってんだ!?」といった声が聞こえてくるよな。こうした選手の移籍の活性化は当然メジャーのように大型契約が多くなってくる。そして育成してきた選手を手放さざるを得なくなるケースが多くなる。これ、一番困る球団は実はカープなのよ。DH制導入を含めてカープは金のかかることに関しては絶対に「Yes」とは言わない球団なんだよな。もちろんカープ球団の背景を考えれば、「はい、そうしましょう」とは言えないのも長くカープファンをやっているからよ~くわかる。
カープはいい素材を見つけてきて鍛えて鍛えていい選手に育てていく。練習もしっかりやるし、性格もいい。上手くなることにどん欲で野球に取り組む姿勢もみんな素晴らしい。こういう選手が来てくれたらと欲しがる球団は沢山ある。でも、その選手たちはカープの財産だよな。これを他球団に流出しやすくなる制度に首を縦に振るはずがないのよ。
カープ以外にもこのコロナ禍でどの球団も減収減益。とてもじゃないけど、そこに行くために議論に入ることすらためらう球団は沢山あるだろうねぇ。そして一番はこうしたアメリカのようなFA制度が日本に馴染むのか?このような状況を歓迎したいと思う気持ちは理解できるけど、実際に運用となると難しいかもしれんねぇ。
ただ、現行のFA制度が本当に「移籍の自由」を活発させているかと言えばそうではないだろう。「宣言」なんてぇ「踏み絵」みてぇなことくらいは廃止した方がいいように思う。同志の皆さんはいかがですかな??
コメント
日本プロ野球の「再」定義というテーマでfa制度の歴史や問題点について9講に分けて
連載した記事です。
木村省吾選手も出てきます。読んでみてください、リンクを貼っておきます。
https://newspicks.com/news/4344198
個人的には昨年ロッテに移籍した福田選手がソフトバンクのフロントに言われた
これでホークスの管理下ではなく、市場の選手になったねという言葉が印象的でした。
丸や大竹はいまだに掲示板やsnsで性格が悪い人間というように批判されてますが、
個人の選択を尊重できる社会になってほしいです。
ラロッカ、栗原ファンさま。
興味深い記事をお勧めいただいてありがとうございます。ぜひ読ませていただきますね。
福田選手のお話は金持ち球団の闇とまでは言いませんが、球団の戦略的な囲い込みの状況が伝わってきますねぇ。
確かにカープを出ていった選手も色々悩んでの決断だったと思います。その悩みの種が仮に「金」だったとしても最終的には選手が決断したこと。尊重してあげる社会になるのが大事なことですね。ただ人気商売の野球選手はその枠にまだ入ることができない。最近は有名人の自殺なんかもそういった個人攻撃が原因と言われていますしね、本当にまだまだ寛容な社会ではないですねぇ。
素晴らしいコメントをいただきありがとうございました。記事の感想をコメント欄か記事にしたいと思います。
日本のFAは、読売が他所の一線級の選手を獲得したいがための制度です。そこに選手会の意志は二の次というのが事実だと思われます。
それと、「活発になるべき」というのが論点みたいですが、Mageさんにとって活発になるべき理由は、そもそもなんですか?そこに全く触れてないので、不毛な文章の印象を受けます。
私的には、そのチームの一線級の選手(カープの丸、ヤクルトの山田などモロ一軍の選手)のFA宣言は、「踏み絵的であってもかまわないでしょう」という立場です。
私はどちらかというと一軍半(たとえばカープの高橋大樹、磯村嘉孝とか..)の選手が活躍の場を求めるために本人主体で移籍できるような制度が必要ではないかと思います。それがFAという名称でなくてかまわない。
tabohさま。こんにちは。
”読売が他所の一線級の選手を獲得したいがための制度です。そこに選手会の意志は二の次というのが事実だと思われます。”
FA導入時は読売の思惑がかなり働いていたように思います。ナベツネさん全盛期でしたからね(笑)。おっしゃる通りでしょう。ただ選手会の意思は二の次というのは事実なのでしょうか?ならば選手会のやっていることは「無駄」ということなのでしょうか?アタクシはそうは思いません。選手会の意見を少しでも実現するためにオーナー会議が承諾しそうな事柄から提案して「少しずつでも」進歩するためにかなり努力はしているように思います。一気に進められずに年月だけ経っている。日本のプロ野球の時代遅れ感が満載なのは「オーナー会議」で大事なことを決めるという手法が原因でしょうねぇ。
”「活発になるべき」というのが論点みたいですが、Mageさんにとって活発になるべき理由は、そもそもなんですか?そこに全く触れてないので、不毛な文章の印象を受けます。”
それはアタクシの文章がヘタクソだという遠回しの優しさなのでしょうか?(笑)
本文には「移籍の活発化」と書いてありますが伝わりませんでしたか…移籍の活発化の理由は選手の出場機会を増やすことに決まってるじゃないですか?あなた様と同じですよ。FA資格を持っている選手もせっかくの権利を行使しずらい環境なのではないか?「宣言」という行為を自動的にFAとなれば所属球団とも他球団ともフラットに交渉できるじゃないですか?所属球団からの引き留め→それを断ってFA宣言というのは日本人が重んじる義理人情に合わない。「宣言」すること自体をなくせばもっと活性化するのでは?「FA」に関して言えばそんな感じです。それと一軍半の出場機会を増やすこと。FA以外でも現役ドラフトやエクスパッションという手もありますとそれも書いてあります。1軍登録だけに限らずずっとファーム暮らしの選手も在籍日数でFAにしてもいい。それ、本文で散々書いてありますが伝わらなかったのであれば残念です。不毛とおっしゃいますが、こうしてコメントを入れて議論できているわけですから、不毛な文章ではなかったのでは?まぁアタクシも決して文章が上手いわけでなく、殴り書きみたいなブログですからお読みになるのが不快なら今後はこちらに来ないことをお勧めします。
一流選手のFA宣言は「踏み絵的であってかまわないでしょう」とおっしゃいますが、その踏み絵を用意する意味ってあるのでしょうか?逆にお聞きしたい。一流選手だってチームへの感謝の気持ち、世話になった人は沢山いますよね?野球選手として育ててもらった恩だって少なからずあるでしょう?そういう部分で心が揺れたご経験はありませんか?
一緒に戦ってきたチームメイトの顔も浮かぶでしょう。それとは別にこれからの自分の野球人生や家族の希望を叶えるきっかけのタイミングでもありますよね?色々なことを考えなきゃいかん。でもFA宣言はどちらかに決めて発表しろと言っているようなものです。それはどんな選手にとってもつらいことなのではないでしょうか?そういった感情は一流二流は関係ないですよ。その前に人間ですから。大金をもらえる選手はそのくらいの苦労や苦悩は味わった方がいい。アタクシはあなた様がそう考えているように感じました。残念だなぁと思います。
コメントありがとうございました。
市内西区のカープフアンです。
移籍を多くするべきということだけではなく、選手本位の制度にすることが大切だと感じます。
つまりもし選手が移籍を望むのなら
fa行使を行いやすい環境や制度を作ってほしいとブログ主さんは言っているんだと思います。
丸や山田などの一流選手は踏み絵的なfaでも構わないとお書きになってますが
なぜそのように思われるのでしょうか?球団やファンの忠誠心を試すような踏み絵を
主力として何年もチームに貢献し、フアンを感動させてきた一流選手に対してだけ課すのはおかしいと思います。
どの選手も移籍制度は一律にするべきだと思います。
選手は入団時ドラフトで行き先を選べません。チームに貢献しfa権を取得したのなら
どの球団でプレーをするのかという事に関しては選手の選択を尊重するべきだと思います。