広島の堂林翔太内野手(29)が22日、広島市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、今季年俸1600万円から2000万増となる3600万円でサインした。(金額は推定) 堂林は「倍以上の評価を頂きました」とうなずき、球団から掛けられた言葉に実感を込めた。「『今年一年、しっかり働いてくれた』ということを言われて、カープに入って11年(の中で)、一番いい言葉を頂きました」と明かし「ほんの少しですけど、恩返しはできたのかなと思いますし、また来年以降も引き締めて頑張らないといけないなという気持ちになりました」と誓いを新たにした。
情報源: 広島・堂林、妻・枡田アナの誕生日に「何かいいプレゼントを」 2000万増に明るい表情
来季への契約更改も大詰め。なんと大トリを務めたのが堂林だった。こんなの去年の今頃、いや今季の開幕、いやいや今季の夏場でもこれを予測した人はおらんだろうねぇ。いやいやいや契約更改が始まった時点でも堂林の大トリは予想できなかっただろうねぇ。
本来ならチーム最高年俸の選手が指名される大トリだけど、今季は「2000万円アップ」の堂林が指名された。まぁカープらしいと言えばカープらしいかもな。とにかく見出しの引用写真を見てもこれほどまでに表情を崩した堂林の笑顔というのは見たことがない。入団から苦しい毎日、そして近年ではトレードや戦力外の噂もあったからな、プロに入ってようやく「よかった」と思えるシーズンを過ごせたようだねぇ。それが何よりだよな。
さて、なぜ今季堂林は「覚醒」したのだろう?カープファンならその話題で一晩飲めそうだし、色々な見方があるだろうねぇ。なのでアタクシもアタクシなりに堂林の覚醒について書いてみようと思う。
「自分に素直になった」これが一番のような気がする
まず、これまでの堂林はどうだったのだろうか?これについてはアタクシは何度も書いているので細かくは書かないけどな、野村謙二郎監督のもと堂林を育てるという目的でどんなことがあろうとスタメンで起用し続けたシーズンがあった。2012年シーズンね。このシーズンがこれまでの堂林のキャリアハイだった。シーズン完走して見て色々な「課題」が浮き彫りになった。「素直」で「真面目な」堂林はこの課題に取り組み続けた。「課題」は沢山あった。特に打撃では「三振」が目立った。このシーズンの三振王を堂々と獲得??している。そして同時に「失策王」も獲得して「二冠王」になった(笑)。当然のこの二つの課題に真正面から取り組み始めた。アタクシは堂林の低迷はここから始まったように思う。
真面目な堂林は様々な人の意見を聞いては取り入れ続けた。そして試行錯誤しなら打撃に取り組んだ。毎年バッティングフォームが変わっていたけどな、結果がなかなかついてこなかった。三振を減らすべく本来の堂林の打撃を見失ってたんだろうねぇ。何かきっかけをつかみたい。その想いが強かったんだろう。自分に合うもの、合わないものの見極めもせずに何でも飛びついてしまっていたように思う。本来の堂林の良さまで自分で消してしまっていたように思う。
守備についてもそう。サードの守備に関しては難しい球や動きの流れの中でのプレーに関してはいいプレーもあるんだけど、時間的に「間」が生まれるプレー、例えば真正面の簡単なゴロや、強い打球で1塁へ送球する時間的余裕が生まれるような場面程、エラーや悪送球をやらかす。ここを「ちゃんと」やろうという気持ちが強かったように思う。「完璧なプレーヤー」を目指しすぎていたようにも思う。それが低迷の要因だったんだろうと。
何かきっかけをと護摩修行を取り入れたり、外野やファーストの守備にも挑戦した。「素直で真面目な選手」の範囲を出ることはなかったように思う。
そして昨オフに年下のチームの主砲である鈴木誠也に弟子入り。まぁ誠也もよく受け入れたと思うし、堂林も勇気がいったことだろう。これが堂林に「何か」を気づかせたような気がする。現に堂林は誠也の「右中間がセンター」という言葉に何かをつかんだ。それは完璧な打撃を求めるあまりに自分の長所の見直しやなぜ高校時代、あれだけ打てたのか?という原点回帰のきっかけになった言葉だったのだろう。右方向への打球が一番伸びるし、強い打球を打てる。それが堂林のいいところだった。しかしこれまでは様々な人からのアドバイスを素直に聞いていた反面、自分自身の打ちやすさや、本来の自分の姿、プレースタイルを度外視していたことに気づいた。何だろう?肝心の自分の気持ちやプレーに素直になれていなかった。自分はダメだ、ヘタクソだとこれまでの自分を否定していたのではないか?もう一度自分はどういう打者なのか?どういう打撃をしたら打てるのか?その結果、自分のスタイルを再確認し、自分の打ちやすいフォームに戻すという「ふりだし」からやり直すことを決断した。プロで10年以上やっていて、また最初に戻すというのは本当に勇気のいることだし、これで失敗したら後がない。それでも堂林は自分に素直になってふりだしに戻す決断をした。これが覚醒のきっかけになったような気がする。
腕をたたんでインコースをさばく「技術」が身を守った
右方向へ打つ為にはやはり真ん中から外寄りの球をどれだけ投手に投げさせるか?ここは打者と投手の駆け引きになってくる。仮に堂林がインコースが打てない、バットに当たらない打者なら相手投手は長所を消すために果敢にインコース攻めをして最後は外のボール球に手を出させる。そういう配球で勝負してくるだろう。これまでの堂林はその手にまんまと引っかかっていた。いやいや、もっと簡単だったろう。右への強い打球を打つことを一時期捨てていたわけだから、堂林のヒットコースは真ん中外よりだけだったように思う。だから追い込まれて高めのボール球にも手を出していたし、インコースにバットが出ないなんてぇ場面を積み重ねていた。
しかし今季の堂林は明らかにヒットゾーンが広くなっていた。まずはインコースの球、そして高めの速球。これを腕をたたんでシャープに引っ張れるようになった。時にはホームランになる打球もあった。これは本当に大きかったように思う。これができる打者に対して投手はどうするのか、インコースには簡単にはいけないとなれば外中心の配球にならざるを得ない。もちろんどこかでインコースを挟まなきゃいかんけど、それを何球目に投げるのかさえ投手が迷う。そのくらいあのインコースや高めの速球を腕をたたんではじき返す技術というのは脅威なんだよな。これが今季の堂林の一番の特徴と言っていいだろう。
しかし、シーズン中盤から打率が下がってきた。これはこの技術にズレが生じ始めてきたからだと思う。もしこのズレをシーズン中に修正する能力を身に着ければアタクシは3割打者になれると思う。
もう一つは外の変化球の見極め。これができるようになった。外に外れていくスライダーや外ギリギリの真っすぐ、そして落ちる球にも引っかからなくなった。これも右方向へ引っ張るという意識が基本にあるからボールを長く見ることができるようになったからだと思う。それだけ変化球やコースを見極める目が厳しくなれた。これも非常に大きいと思う。これにより出塁率が上がり三振が減った。三振に関して言えば堂林は今季91個でセリーグの7位。キャリハイの2012年は150個も三振していた(笑)。打席数に対する三振の率は…
2012年が554打数150三振で.270、2013年が410打数96三振で.234、2014年が330打数87三振で.263。そして今季は451打数91三振で.201と飛躍的に三振する確率が減った。三振を減らすべく試行錯誤を重ねたけど、最終的に自分の打撃を取り戻すことによって課題の三振数を減らすことができた。打率も上がったよな。
これも腕をたたんで速球を跳ね返す技が身を助けたと言っていいだろう。この技術を常にできるようになれば来季も数字はもっと良くなるだろうねぇ。
カッコ悪さを受け入れた「ワンバン送球」
今季、堂林は打撃を買われてサードのポジションを手にした。皮肉だけど出場機会を求めて外野やファーストの練習をしてきたけど、結局は打たなきゃ使ってもらえない。打てば練習していないポジションだって与えてもらえる。今季のキャンプで堂林はどれだけサードの練習をしてきただろうか?あまりやっていないと思う。
そもそもサードのポジションをはく奪されたのは打てないというよりは失策の多さからだった。捕球もそうだけどやはり送球に難があった。
ちなみに今季の堂林はセ・リーグの「失策王」である。失策数は18。ちなみにキャリアハイの2012年は29個やらかしている(笑)。恐らく失策を重ねれば打撃の方も上手くいかなくなるだろう。それを堂林は失策を重ねながらも持ちこたえた。今季の堂林の特徴としては送球に関しては「安全策」に徹した言っていいだろうねぇ。本来ならプロ野球選手、矢のような送球を見せなきゃいかん。それを安全策でワンバウンド、ツーバウンド送球というのは正直「カッコ悪い」よな。それでも堂林はチームの為はもちろん自分の為にも安全策で守っていたように思う。その心掛けでもっとあったであろう失策も18で収まったし、失策から来るメンタルのダメージも抑えられたように思う。まぁ本来なプロらしいプレーを見せて欲しいけどな、今季好調を維持できたいい心掛けだったように思う。まぁでも、練習せんとな(笑)。
ファンの心に響くのは「素直さ」という源泉から湧き出る「がむしゃらさ」「ひたむきさ」
こうしてみると堂林という選手は非常に「不器用」なんだろうねぇ。他球団ならとっくにユニフォームを脱いでいたかもしれん。それでもチームメイトもファンも堂林の活躍にはどうしても手放しで喜んでしまう。これってどうしてなんだろうか?
これまで書いてきたように堂林翔太という選手は本当に心がきれいで素直な野球少年がそのままデカくなった。そんな感じなんだろうなぁと。だからアドバイスにはきちんと耳を傾けるし、外野やれと言われれば腐らずに練習に取り組む。それもガムシャラに、ひた向きに。決してふてくされたり、手を抜いたりしない。堂林翔太というのはそういう男であるというのがにじみ出ているよな。
アタクシ位の年齢なら、自分の息子や娘の嫁ぐ相手と考えたら堂林のような男がいいしな、色んな世代から受け入れられる。そういう男なのよ。
堂林が活躍するとマツダスタジアムも盛り上がる。ベンチも盛り上がる。それは堂林の日ごろの野球に取り組む姿勢、がむしゃらさ、ひたむきさをみんな知っているから。頑張っている堂林に何とか結果をと誰もが思っているからなんだと。色んな意味でムードメーカーなんだよな。この堂林が来季も今季くらい、それ以上の活躍をしてくれれば、V奪回も盛り上がってくるだろうねぇ。そういう意味では時間がかかったけどカープには欠かせない選手になってくれた。来シーズンは本当に大事なシーズンになるだろうねぇ。故障には気を付けて、もう一度サードの守備で目いっぱい練習して、ファンやチームメイトに沢山の笑顔をもたらして欲しいよな。そして来季のこの時期にこの日以上の満面の笑みを浮かべる堂林の顔をもう一度見せて欲しいよな。
コメント